Story

閉ざされた扉の時代。黄昏、やがて混沌。

人間が作り出した神々が過ぎ去った、それからの世界。
五つに区切られた大地から零れゆく物語。
降りしきる運命が大河を作り、見えざる明日へと向かっていた。

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この世界の、最後の人間が居た。
天児(あまがつ)と呼ばれるそれは、五つに区切られた内の一つ、『白の大地』と呼ばれる地に居を構えている。
彼はその邸宅で幾つかの『人型』と言葉を交えていた。

「これで本当に平和が来るのかな。」
白い髪の少年が人間に問いかける。
彼はテクニカと呼ばれる種族で、それは人間に類似しており人間たちの末孫ではないかとも言われている。
彼は区切られた世界の一つ、『赤の大地』で始まったばかりの国を差配している。

「戦いの無い時代を〝平和〟と呼ぶのならそれはまだ遠いさ、少年。」
否定とも肯定ともつかぬ言葉を紡ぐ女性。
『青の大地』と称された、いつかの時代に人間か神に等しい存在が生み出した機械が住む地で、彼女こそがその支配的種族メルカトルの王である。

「そうですね……、相変わらず黒はだんまりのままですから平和条約が結ばれたとしても……。」
獣頭人躯の青年が困ったような声でメルカトルに同意する。
それは『緑の大地』……この世界の原生種族たちの領域の存在の一つであるミクストルの顔役である。

天児が現在、『白の大地』の代表者を務めているため、五つの世界の内で四つの代表者が集まっていることとなる。
空いた座席に座るはずの『黒の大地』は寿命を持たぬ種族が支配しており、永すぎる生で鈍化しゆく感情をスリルによって維持している。
彼らは天児たちが今生きている五つの大地がいがみ合い、
戦いを引き起こし、
摩耗と損失によって消えようとしているこの世界を止めようとしているこの会合の理由を真っ向から否定する種族性であるが故にここに参加せず、
これが結実した後はどちらかが潰れるまでの戦いが待ち受けているのは火を見るよりも明らかだった。

「そうはさせないさ、たとえ一時の間は血が流れたとしても…。」
最後の人間は滅亡を押し付け合うような未来を否定するように言葉を紡ぐと、覚悟を新たにした視線を一同に向けた。

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「最後の人間、天児か……。」
楽しげに呟いたのは『赤の大地』を二分している戦闘種族、ラファジエの男性だ。
戦闘を至上と考える彼らの中で、剣戈を交えるだけがそれではないと結論するものもいる。
この男――鬼眼と呼ばれる痩躯――は毒と短刀で戦いを引き起こし、次の戦いを生み出すことを戦闘行為と捉えていた。

「悪巧みもいいけどさ、上手くいくの?」
疑問を素直にぶつけたのは『黒の大地』の永世種族、ドラクルの少女。
いや、少女と言ってもこれが何年生きているかなど誰にも解らぬ。
産まれたばかりなのか、或いはそうではないのか。グリーナーとあだ名された彼女を見れば、素直に見るべきなのか。

「そう焦るなよ、旦那の謀が外れたことはねえさ。」
へらへらと笑うのは『青の世界』のメルカトル。
平和に向かおうとしている王が居る一方で、それを良しとしないのは彼らメルカトルは商売を生きがいとするからだ。
表立って言葉や行動で示さないだけで、戦争特需で儲けたいと思うものは少なくはない。

「どうでもいい。」
さっさと仕事を提示しろと言わんばかりに不機嫌な『緑の大地』の珪素生物、リヴス。
リヴスは他者を造り換えて己と同じ種族にすることを欲求としており、
集団生活をする昆虫の如き思考及び行動を本能と目的とするはずだが、この個体はそこから外れているのか、鬼眼の考えに手を貸している。

鬼眼はひとつの望みがあった。
彼はその望みを果たすためにまるで天児とは逆の行動を取って、そして同じように会合をしていた。

「滅びる滅びないなど、今定められることではない。まして一人の意思で世界など変わらぬよ、天児……。」
まるで子供が新しいおもちゃを与えられたときのように無垢な微笑みを浮かべてから、彼はこれからの策謀を紡ぎだした。

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